Sadowsky(サドウスキー)とは
アメリカ合衆国のニューヨークに居を構える楽器製造・販売会社。少人数で運営する小規模企業で、Sadowskyの名を冠したプライベートブランドを展開。製品クオリティの高い楽器として真っ先に候補にあがるブランドです。ベースやギターといった楽器本体の他に、プリアンプや弦等のパーツ類も製造。
基本的にはベースを主力商品としており、エンドース契約しているアーティストもベーシストが中心です。
後述しますが、元々リペアショップであったことに拘りがあり、木材の加工や塗装、ピックアップ製造などは信頼のおけるメーカーへ特注し、Sadowskyの工房で組み合わせと調整を行い完成させるという形態を取っています。
歴史
1979年にRoger Sadowsky(ロジャー・サドウスキー)によって創業。当初はリペアショップとしてエレキベースのリペアや改造を専門としていました。
Sadowskyはリペアマンとしての評価が高く、その当時の顧客の中にMarcus Miller(マーカス・ミラー)がいたことでも有名です。
リペアのノウハウを活かし、80年代より楽器の製造を開始します。ニューヨークで活躍するスタジオミュージシャン達を中心に、楽器ブランドとしての支持も集めていきます。
1997年、Sadowskyの代理店であったオカダインターナショナルがライセンス認可を受け、日本の製造ラインであるSadowsky TYOを設立。元Sadowsky従業員である菊地嘉幸をチーフとし、廉価版に当たるシリーズの製造を開始。本社であるSadowskyとの資本関係はありませんが、菊地嘉幸が元従業員であることから名前の使用を許可されています。詳細は製品シリーズの解説にて。
製造ライン
Sadowsky NYC
本社で企画から組み込みまで行う、エレキベース、エレキギター、エレクトリックナイロンを中心としたカスタムオーダーのライン。
基本的には受注生産による製造となっていますが、自社店舗にて完成品の販売も行っているようです。エレキベースは34インチのスケールのみで製造。エレキギターはTLタイプやディンキータイプを基準にしたボディシェイプを採用。
顧客による特別な希望がない限りはRoger Sadowsky特注のDiMarzio製ピックアップを使用。
Sadowsky TYO
日本製カスタムオーダーライン。チーフルシアーの菊地嘉幸監修の元、ユーザーの要望に合わせて製造。
Sadowsky MetroLine
日本の廉価版製造ライン。
NYCがチェンバード加工を基本としているのに対し、MetroLineはソリッド構造、というボディ加工の違いがあります。
その他、ハードウェアやボディ材が指定のものに限定されている等の特徴があります。製造はRedHouseやT's Guitars等に外注。
Sadowsky Archtop
寺田楽器に外注で製造、自社でセットアップするアーチトップギターの製造ライン。オカダインターナショナル仲介。NYCと同じくピックアップは特注のDiMarzio製ピックアップを使用。
製品の特徴
楽器製造業開始当時からプロのミュージシャンに評価されていた通り、製品クオリティが高いことが特徴と言えるでしょう。正に職人のためのアイテムというような完成度で、「Sadowskyならば間違いない」と思わせてくれる確かな感触があります。
ニューヨークのスタジオミュージシャン達に愛用されていたことから分かる通り、基本的にはジャズ・フュージョン方面での人気が高いブランドですが、そのクオリティの高さに注目が集まり、ロック等の他ジャンルでの使用者も増えました。
新品として店頭に並んでいる商品のプレイコンディションは非常に素晴らしく、元リペアショップとしてのセットアップへの強い拘りを感じます。
ギターのクオリティ及び評価も非常に高いのですが、基本的にはエレキベースを主力商品としています。
主な製品シリーズ
NYCシリーズ
Will Lee Model

トップクラスのセッションベーシストとして名高いWill Leeのシグネチャーモデル。細めのネックというWillの拘りが反映されたモデルで、ナット幅が標準仕様である1.52インチ(38.6mm)から1.45インチ(36.8mm)に変更されています。
Sadowsky NYC Bassシリーズ

ニューヨークで活躍するファーストコールベーシスト達から強い支持を受けるモデル。5弦やシングルカッタウェイ等、ユーザーの要望に応じた仕様変更が可能。
Sadowsky NYC Guitarシリーズ


Sadowsky NYC Bassと同じく、特注で仕様変更が可能なモデルのエレキギター。ディンキータイプとテレキャスタータイプが基本シェイプ。
Electric Nylon

テレキャスターシェイプのエレガット。Lee Ritenour(リー・リトナー)やChuck Loeb(チャック・ローブ)、Pat Methany(パット・メセニー)等のコンテンポラリージャズギタリスト達に愛用されるモデルです。
TYOシリーズ
Sadowsky TYO Bass

カスタムオーダーベース。
Limited MM4

Roger SadowskyによってモディファイされたMarcus MillerのFender Jazz Bassを元にTYOの製造ラインで再現したモデル。
MetroLineシリーズ
SlapMaster

その名の通りスラップ時のサウンドと演奏性を追求したモデル。レギュラーモデルよりも重量のあるボディや様々なサイズ感など、まさにSlapMasterと呼べるスペック。
UVシリーズ

RVシリーズ

MVシリーズ

RSシリーズ

MSシリーズ

Rシリーズ

Mシリーズ

NYCシリーズの基本的なエレキベースのモデルを元にMetroLineシリーズとしてラインナップ。それぞれ4弦と5弦の仕様が存在。
Archtopシリーズ
LS-15

比較的コンパクトなサイズ感のフルアコースティックギター。ボディトップのほぼ中心に位置するブリッジの影響による豊かな低音とサスティンが魅力のモデル。HH仕様。
LS-17

Gibson L-5 CESを元にデザインされたフルアコースティックギター。ピックアップはハムバッカーをフロントに1基のみ搭載、ウォームなトーンで正にジャズギターといったテイスト。
Semi Hollow Model

後述のJimmy Bruno Modelを元にボディ厚を1.75インチまで減らし、センターブロックが追加されたセミアコースティックギター。深めのカッタウェイによるハイポジションでの演奏製の高さと、ハウリングへの強さが魅力のモデル。
SS-15

Semi Hollow Modelと同規格の薄くコンパクトなボディのフルアコースティックギター。素早いレスポンスやハウリングへの強みが魅力。
Jim Hall Model

モダンからコンテンポラリーのスタイルで最早英雄的存在となっているJim Hall(ジム・ホール)のシグネチャーモデル。Sadowsky初のアーチトップモデル。よりアコースティックなレスポンスを求めて厚みを落としたフルアコースティックギター。
Jimmy Bruno Model

ジャズギタリスト、Jimmy Bruno(ジミー・ブルーノ)のシグネチャーモデル。小振りなボディながら、リッチで暖かみのあるサウンドが特徴です。
主な使用アーティスト
Will Lee(ウィル・リー)

ジャズ・フュージョンを中心に幅広いジャンルで幾多ものレコーディングやライブをこなし、今もなお活躍し続けるファーストコールベーシストの一人。使用機は彼の拘りが反映されたシグネチャーモデル「Will Lee Model」で、ピックアップフェンスを装着して使用。
Verdine White(ヴァーダイン・ホワイト)

伝説的ファンクバンド、Earth, Wind & Fire(アース・ウィンド・アンド・ファイア)のベーシスト。NYC Standard 4st/21Fを使用し、Verdine White Specとしてシグネチャーモデルも出ています。
Tal Wilkenfeld(タル・ウィルケンフェルド)

Jeff Beck(ジェフ・ベック)やChick Corea(チック・コリア)、Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)等の大御所達との共演で有名な女性ベーシスト。使用機はNYC Bass。
Chuck Loeb(チャック・ローブ)

ブラジリアンやモダンジャズの要素を強く持ったコンテンポラリージャズギタリスト。NYCラインから出ているディンキースタイルのシグネチャーモデルやElectric Nylon、LS-17等多数使用。緑の個体のシグネチャーモデルは特に気に入っていたようで、イヤーモニターと色を揃えていることをニコニコしながら語っていたのが印象的です。
Lee Ritenour(リー・リトナー)

1970年代よりスタジオミュージシャンとして大活躍のコンテンポラリージャズギタリスト。コンテンポラリージャズ界のラスボス集団とも名高いレジェンドバンド、Fourplay(フォープレイ)の創設メンバーの一人で、結成当時辺りからナイロン弦の演奏でElectric Nylonを愛用していました。
Pat Metheney(パット・メセニー)

とても一言では形容しきれないほど、非常に高い芸術性を持つプログレッシヴジャズギタリスト。90年代前半頃のツアーでElectric Nylonを使用。
Jim Hall(ジム・ホール)

インタープレイの天才と称された抜群のアンサンブル感覚を持つ伝説的ジャズギタリスト。シグネチャーモデルであるJim Hall Modelを晩年まで使用。愛用機のボディサイドには奥さんに貼られたステッカーの痕がありました。
Andy Summers(アンディ・サマーズ)

イギリスのロックバンド、The Police(ポリス)に所属していたことで有名なギタリスト。元々ストレートアヘッドなジャズを演奏していたプレイヤーで、The Policeにおけるテンションコードの使用もそのバックグラウンドによるものが大きいでしょう。Sadowsky製の楽器はSS-15を使用。